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老後にかかる費用と備えについて
老齢年金は、原則として65歳から生涯にわたって受け取ることができる年金です。まずは公的年金の基本となる「2階建て」の仕組みと、人によって受給開始時期が異なる「特別支給」について、基本を押さえておきましょう。
日本の公的年金制度は「2階建て」の構造に例えられます。1階部分は日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」、2階部分は会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する「厚生年金」です。また、3階部分として任意加入の私的年金があります。
ご自身がどの区分(第1号〜第3号被保険者)に該当するかによって、将来受け取れる年金の種類が決まります。
※ 第3号被保険者は保険料負担はなし(第2号被保険者の制度より拠出される)
昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられました。この引き上げの過程で、一定の条件を満たす方が「65歳になる前」に受け取れる厚生年金のことを「特別支給の老齢厚生年金」と呼びます。
この年金を受け取るには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
生年月日と性別に応じて、それぞれ受給開始年齢が異なります。自分が対象かどうかは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で確認することができます。
老齢年金を受け取るためには、一定期間保険料を納めるなどの「受給資格」を満たしている必要があります。ここでは、加入の仕組みや必要な要件といった基本ルールに加え、将来手にする年金額を増やすための具体的な方法についても解説します。
国民年金(老齢基礎年金)
自営業、フリーランス、学生、専業主婦/主夫 などを含むすべての人が対象です。
保険料は一律で月17,920円(令和8年度)で、まとめて前払い(前納)すると割引が適用されます。
参照:日本年金機構/国民年金保険料 (2026年4月1日)厚生年金(老齢厚生年金)
会社員や公務員が対象です。保険料は給与天引きにて、標準報酬月額の18.3%分の金額を雇用主(会社)と折半して支払います。
1階部分の国民年金に加え、現役時代の収入や加入期間に応じた報酬比例部分を受給できるため、国民年金のみの場合よりも受給額が手厚くなるのが特徴です。
老齢年金を受け取るためには、下記の「受給資格期間」が10年以上あることが必須条件です。
10年に満たない場合はどうなる?
もし受給資格期間が10年に満たない場合、原則として老齢年金を受け取ることができません。その場合は、60歳以降も国民年金に任意加入して期間を延ばしたり、過去の未納分を後払い(追納)したりすることで、受給資格を確保できる可能性があります。
年金支給額は、一律ではありません。「加入期間」や「現役時代の収入」によって決まりますが、制度を上手く活用することで、受給額を増やすことも可能です。
老齢基礎年金(1階部分)
20歳から60歳までの40年間に保険料をすべて納めると満額で月額70,608円※(令和8年度)が支給されます。未納や免除期間があると、その分減額されます。
※昭和31年4月1日以前生まれの方は月額70,408円
老齢厚生年金(2階部分)
加入期間の長さに加え、現役時代の平均給与(報酬)が高いほど受給額も多くなる「報酬比例」の仕組みです。
受け取る人 |
年金受給額 |
|---|---|
|
単身1人分・国民年金/ |
70,608 円 |
|
夫婦2人分・厚生年金/ |
237,279 円 |
※ 平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の満額の老齢基礎年金)の給付水準
50歳以上の方は「ねんきん定期便」で、60歳まで現在の条件で加入した場合の受給見込額(概算)を把握できます。
参照:日本年金機構/令和8年4月分からの年金額等について (2026年4月1日)将来の備えをより厚くするために、以下の方法を検討してみましょう。
1 | 60歳以降も任意加入
・厚生年金加入を続ける
国民年金の加入期間が40年に満たない場合は、60歳以降も「任意加入」して満額に近づけることができます。また、会社員として働き続けて厚生年金に加入することで、2階部分の受給額をさらに上乗せできます。
2 | 国民年金保険料の「追納」をする
過去に免除や猶予を受けた期間がある場合は、10年以内であれば「追納」して将来の減額を防ぐことができます。
3 | 「付加年金」または
「国民年金基金」を利用する
※自営業等(第1号被保険者)の方
付加年金
月額400円を上乗せして払う「付加年金」が非常に効率的です。受取れる付加年金の年額は「 200円 × 付加保険料納付月数 」です。
国民年金基金
月額68,000円を上限に、掛金を拠出することで将来受取れる年金額を増やすことができます。
掛金は全額所得控除の対象となり、受け取る年金も公的年金等控除の対象です。
加入後、年金・掛金の額を増減できますが、中途解約はできません。
※国民年金基金が付加年金を代行しているため、付加保険料と国民年金基金の掛金は同時に納付できません
65歳以降も仕事を続けながら年金を受け取る場合、「在職老齢年金」という仕組みへの理解が欠かせません。給与と年金の合計額によっては、老齢厚生年金の一部または全額がカットされる場合があります。
老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働く場合、収入と年金の合計額によっては、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止になる場合があります。
「基本月額 ※1」+「総報酬月額相当額 ※2」の合計が65万円を超えると、超えた分の半額の年金が支給停止となります。2026年4月より、この基準額が大幅に引き上げられました。
※1 加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額 ※2 標準報酬月額+1年間のボーナス合計額÷12
基準額
(令和8年度)
これまでの
月額 51万円
大幅アップ
月額 65万円
在職老齢年金
― 1 ―
老齢基礎年金はカットされない
支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金」のみです。1階部分の「老齢基礎年金」は、どんなに高い収入があっても全額支給されます。
― 2 ―
「働き損」にはならない仕組み
年金がカットされる場合でも、「給与+受給できる年金」の合計額は、給与が増えるほどなだらかに増加するように設計されています。そのため、働くことで手取り総額が減ることはありません。
― 3 ―
年金支給調整の手続きは不要
働きながら年金をもらう際、給与額に応じて年金をカットする計算や手続きは、日本年金機構と勤務先の間で自動的に行われます。受給者本人が年金事務所へ書類を提出する必要はありません。
人手不足が深刻となる中、高齢者の活躍の重要性が高まっています。在職老齢年金制度は、時代の変化とともに「高齢者の就労を妨げない仕組み」へと大きく舵を切っています。
これまで「年金がカットされるのが嫌だから、働く時間を抑える」という声が多く聞かれました。こうした状況を解消し、意欲ある高齢者が活躍しやすくするため、2026年4月より支給停止の基準額(ボーダーライン)が、これまでの51万円から65万円へと大幅に引き上げられました。
制度のあり方については、現在も以下のような視点で議論が続いています。
年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入や所得が一定基準以下の年金受給者に対し、生活の支援を目的として年金に上乗せして支給される制度です。消費税率の引き上げ分を財源としており、一度請求すれば要件を満たす限り継続して受け取ることができます。
年金生活者支援給付金(老齢年金生活者支援給付金)を受け取るためには、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。
繰上げ受給をして65歳前から老齢基礎年金を受給している場合でも、給付金の支給は65歳からとなります。
ご本人だけでなく、一緒に暮らすご家族全員の所得が一定以下である必要があります。
前年の「公的年金等の収入金額」と「その他の所得(給与所得など)」の合計が、以下の基準額以下であることが条件です。(令和8年度)
・ 昭和31年4月2日以降生まれの方
: 909,000円以下
・ 昭和31年4月1日以前生まれの方
: 906,700円以下
老齢年金生活者支援給付金の条件
注意!所得に含まれないもの
「年金収入があるから基準を超えてしまう」と思われがちですが、障害年金や遺族年金などの非課税年金は、この判定における「所得」には含まれません。また、基準額をわずかに超える場合でも、条件により振興的な役割を持つ「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される可能性があります。対象かどうかが不明な場合は、お近くの年金事務所等へ相談することをおすすめします。
老齢年金生活者支援給付金は、一律の金額が支給されるわけではなく、ご自身の保険料の納付状況によって決まります。「申請(請求)」を行わないと1円も受け取れないため、手続きの流れを正しく理解しておきましょう。
老齢年金生活者支援給付金の基準額は月額5,620円です。以下2つの合計が支給額となります。
保険料納付済期間に基づく額
5,620円 ×保険料納付済期間
(月数)÷ 480(月)
保険料免除期間に基づく額
11,768円 ×保険料免除期間
(月数)÷ 480(月)
40年間(480月)すべて保険料を納付すると、月額5,620円(年額67,440円)が満額支給されます。
対象となる方には、日本年金機構から封筒(請求手続書)が届きます。
一度申請すれば、翌年以降も要件を満たしている限り自動的に継続されます。ただし、世帯状況の変化などで対象外となった後、再び対象になった場合には再度の申請が必要になるケースがあるため注意が必要です。
参照:厚生労働省/年金生活者支援給付金制度について (2026年4月現在)原則65歳から始まる老齢年金ですが、希望すれば60歳から75歳までの間で受給開始時期を選ぶことができます。早く受け取る「繰上げ」と遅く受け取る「繰下げ」、それぞれのメリット・デメリットがあります。
本来より早く年金を受け取ることができますが注意点がいくつかあります。代表的なものを以下に記載します。
など
繰り上げる場合、
受取累計額が下回る年齢
昭和37年4月2日以降
生まれの人の例
|
受給開始年齢 |
60歳 |
61歳 |
62歳 |
63歳 |
64歳 |
|---|---|---|---|---|---|
|
減額率 |
24.0% |
19.2% |
14.4% |
9.6% |
4.8% |
|
受取累計額が下回る年齢 |
81歳 |
82歳 |
83歳 |
84歳 |
85歳 |
受給開始年齢 |
減額率 |
受取累計額が |
|---|---|---|
60歳 |
24.0% |
81歳 |
61歳 |
19.2% |
82歳 |
62歳 |
14.4% |
83歳 |
63歳 |
9.6% |
84歳 |
64歳 |
4.8% |
85歳 |
受給開始を遅らせることで年金額を増やすことができますが、注意する点もいくつかあります。
など
繰り下げる場合、
受取累計額が上回る年齢
※昭和27年4月1日以前生まれの人は
繰り下げできるのは70歳まで
|
受給開始年齢 |
66歳 |
67歳 |
68歳 |
69歳 |
70歳 |
71歳 |
72歳 |
73歳 |
74歳 |
75歳 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
増額率 |
8.4% |
16.8% |
25.2% |
33.6% |
42.0% |
50.4% |
58.8% |
67.2% |
75.6% |
84.0% |
|
受取累計額が |
78歳 |
79歳 |
80歳 |
81歳 |
82歳 |
83歳 |
84歳 |
85歳 |
86歳 |
87歳 |
受給開始年齢 |
増額率 |
受取累計額が |
|---|---|---|
66歳 |
8.4% |
78歳 |
67歳 |
16.8% |
79歳 |
68歳 |
25.2% |
80歳 |
69歳 |
33.6% |
81歳 |
70歳 |
42.0% |
82歳 |
71歳 |
50.4% |
83歳 |
72歳 |
58.8% |
84歳 |
73歳 |
67.2% |
85歳 |
74歳 |
75.6% |
86歳 |
75歳 |
84.0% |
87歳 |
※昭和27年4月1日以前生まれの人は繰り下げできるのは70歳まで
年金受給者の事務負担を減らすため、公的年金等の収入が一定以下であれば確定申告が不要となる「確定申告不要制度」がありますが、繰上げ・繰下げ受給を選択する際にはいくつか注意すべき点があります。
確定申告不要制度の対象となる方
以下の2つの条件をどちらも満たす場合、所得税の確定申告をする必要はありません。
・公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下である。
・公的年金等以外の所得金額(給与所得や生命保険の年金など)が20万円以下である。
繰下げ受給を選択する際の注意点
将来受け取る年金額が増額されるため、非課税枠を超えてしまう可能性があります。年金額が増えることで、それまで「確定申告不要」の範囲内だった方が申告が必要になる場合があります。
繰上げ受給と税金の関係
繰上げ受給により年金額が抑えられることで、所得が低くなり住民税非課税世帯に該当しやすくなるケースがあります。
確定申告をしたほうが良いケース
制度上「不要」であっても、生命保険料控除や医療費控除、マイホームの住宅ローン控除などがある場合は、確定申告(還付申告)を行うことで、源泉徴収された所得税が戻ってくる可能性があります。
いいえ、必ずではありません。2026年4月からの新基準では、1ヶ月の「給与(ボーナス込)」と「老齢厚生年金額」の合計が65万円以下であれば、年金がカットされることはありません。多くの方は全額受け取りながら働くことが可能です。
(2026年5月)
公的年金の受給額は、現役時代の働き方や加入期間によって一人ひとり大きく異なります。公的年金だけでは将来の生活に不安を感じる場合は、以下のような制度や商品を組み合わせ、自分に合った「自分年金」を準備することを検討してみましょう。
自営業・フリーランスの方:
付加年金、国民年金基金、iDeCo
会社員・公務員の方:
企業年金、iDeCo、マッチング拠出
共通して活用できる備え:
個人年金保険、NISAつみたて投資枠、民間保険の活用
将来の安心をカタチにするために、まずは身近な「保険クリニック」の店舗へお気軽にご相談ください。
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