年金や相続、老後資金をFPに相談娘に多めに財産を残したいのですが、どのような方法がありますか?

今年で75歳になる男性です。妻は5年前に亡くなり、現在は娘夫婦と暮らしています。もう一人の子どもである息子は、別居で一人暮らしをしています。私の財産はそれほど多いわけではありませんが、それでも自宅とある程度の金融資産があります。実は娘夫婦にはいつも世話になっているので、息子よりも多めに相続させたいと思っています。どのようにすれば、娘と息子が争うことなく、娘に多めに遺すことができるでしょうか。

FPからの回答

相談者:年齢75歳、年金収入:月額15万円

子どもは2人:長男と長女(現在は、長女夫婦と同居)

保有財産:自宅マンション(評価額1,500万円程度)、金融資産2,000万円

遺言書を作成しておくと、相続にご本人の意思を反映できます

一人暮らしで、経済的にも余裕があるご長男に対して、ご長女夫婦は子供がいて余裕がないにも関わらず、同居でいろいろと世話になっている。そうであれば、ご長女に少し多めに相続させたいと考えるのも自然な気持ちでしょう。

配偶者のいない親が死亡した場合、その財産は子どもたちが均等に分割して相続するように、「法定相続割合」というもので定められています(他に直系尊属がいない場合)。これは、あくまで遺産を分割する時の目安で、親族(この場合は子どもたち)の話し合いで合意すれば、どのように分けても問題ありません。ご長男が、ご長女の状況を考慮して、遺産分割に合意してくれればよいのですが、こればかりはわかりません。親としては、ご長女が多めに相続するように、あらかじめ対策を取っておきたいものです。

対策としては、2つ考えられます。1つは遺言書を作成することです。遺言書があれば、そこに指定されたとおりに遺産が分けられますので、亡くなったご本人の意思を反映させることができます。

遺言書には、主に3つの書式があります。自分で書いて保管しておく「自筆証書遺言」、公証役場で作成してもらい、保管してもらう「公正証書遺言」、自分で書いて封印した上で公証役場に保管してもらう「秘密証書遺言」です。いずれも、書式や証人の有無などの規定が決まっており、それに則って作成されたものでないと、正式な「遺言書」とは認められません。正式な「遺言書」を作成するには、「公正証書遺言」を作成するのが安心ですが、いきなり公証役場に行くよりは、たとえ費用がかかっても、行政書士や司法書士などに作成を依頼するのがよいでしょう。ただし、財産の内容などが変わってしまうと、遺言書を書き直さなければなりませんので、注意が必要です。

生命保険への加入で、財産の一部を遺産から分けることができます

もう1つは、生命保険に加入して、ご長女に保険金としてお金が渡るようにしておく方法です。生命保険からの死亡保険金は、「相続人固有の相続財産」になりますので、相続人の間でどのように分けるのかという〝遺産〟の対象にはなりません。生命保険の対象となっている被保険者が亡くなると、あらかじめ決めておいた保険金受取人に、保険金が直接渡ります。生命保険に加入すると、財産の一部を〝遺産〟から分けておくことができるのです。

とはいえ70代になると、加入できる保険の種類も限られてきます。ただ、加入の目的が、遺族の生活保障や財産を増やすことではなく、財産を別枠で確保することですので、それにあった保険商品を選ぶとよいでしょう。加入時にまとめて保険料を払い、生涯保障が続く「一時払終身保険」などが適しています。最近の低金利で、円建てのものはほとんど増えない状況となり、一時の人気はなくなりました。しかし、財産を別枠で確保し、保険金受取人に確実に遺すという機能は変わりません。一時払終身保険への加入は、遺産とは切り離して、特定の子どもに財産を残すのに有効は方法です。

生命保険から受け取る死亡保険金には、非課税措置も設けられています。法定相続人1人につき、500万円を差し引くことができるのです。ただし、非課税額を超えた分は他の相続財産に加算されます。とはいえ、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)までは相続税がかかりませんので、今回のケースでは相続税の心配はないでしょう。たとえかかる場合でも、生命保険に加入することで相続税を抑える効果があります。

具体的な財産分けの指定などが必要なく、ご長女に多めに財産を遺すという目的だけであれば、費用や書き直しの必要もない、生命保険の活用がよいでしょう。

いずれも、特定の子どもの相続分を指定でき、ご長女の相続分をご長男のものよりも多くすることができます。ただし、ご家族が全く知らないでいると、相続が発生した時に、感情的ないしこりとなりかねません。ご長男が不満を抱かないためにも、お元気なうちから、お子様方には、お気持ちを話されておくとよいでしょう。

(2017年7月 村井 英一)

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